川早毅幸(かわはや たけゆき)
ヒルコ,マネキン◎●,カタナ

「美沙を護るために、僕は存在する。例え、この体がなくなろうとも美沙を護れるなら本望だ。」

一体、僕はここにどれだけいるのだろう。
何秒、何分、何時間、何日、何年・・・もはや時を数える、という思考すら停止していた、あの頃。実験の繰り返しで、漆黒の髪は白髪になっていた。実験体としてしか、その存在を生きる価値がないと言われ続け、そんなものかと思い始めていた時、その瞬間は来た。
もはや、僕に抗う様子もなくなったのを見て、奴らは安心したのか、こちらの担当を新人に変えた。
こんな状況を見逃すわけにはいかない。逃げられないと思っていたのに、奴らの方からチャンスを与えてくれたのだから。
僕は一瞬の隙を見つけ、まずは、その新人担当を殺害。次いで、研究所にいた研究員全員を皆殺しにした。今までやられていた事を考えれば、同情の気などは起こりはしない。
そこの研究所を抜け出し、雨で濡れている路上を走っていた。
だが、殺戮をした直後という事もあり、ろくな距離を走れないまま、路上で倒れ込み、気を失っていた・・・。

「・・・ここは・・・一体・・・」
目が覚めた時、僕はベッドの上にいた。
「・・・目が覚めた?」
優しげな声が聞こえ、そちらを見てみると、綺麗な女性が立っていた。
「・・・貴方は・・・?」
僕の問いに、女性は優しげな笑みを浮かべ、
「私の名前は、早川美沙。路上で倒れてたから、びっくりしちゃったわよ」
と、言ってから、僕の顔を覗き込んだ。
「・・・で、君の名前は?」
早川さんに問われ、僕は思考が止まった。・・・僕の名前・・・あの地獄を思い出す・・・。
「・・・忘れましたし・・・思い出したくもありません」
そんな様子を見た早川さんは、しばし僕の顔を凝視した後、
「・・・まぁ、思い出したくもないもの思い出させるってのもアレよねぇ・・・とはいえ、名なしのゴンベエさん、じゃヒネリもないし・・・」
彼女はしばし考えた後、
「なら、川早毅幸、っていうのはどう?」
と提案してきた。
「川早毅幸、ですか?」
早川さんが頷く。
「そう、まぁ、川早は私の名字を逆にしただけ、毅然とした態度で幸福を招く、という意味を込めて、毅幸。どう?」
「・・・川早毅幸・・・素敵な名前だと思います。」
「なら、決まりね。貴方は今日から川早毅幸よ。」

そんなこんなで、僕は美沙から新たな名前をもらった。
いや、名前だけではない。新たな生活も与えてもらった。
一応美沙の家からすぐの場所にある小さな会社に勤めることになった。以前の僕からは考えられない進歩といえる。
ちなみに、美沙の仕事関連で何らかのトラブルがあり、僕の力が必要になれば、僕は喜んでこの力を美沙に貸す。今までそうしてきたし、これからもそうだろう。
そう、僕が何者なのか、美沙には話してある。それでも、彼女の態度は以前とは変わりがない。
もしかしたら、僕の力だけを欲してるのかもしれない。でも、そんな事は些細な事だ。僕に心の拠り所を与えてくれた事に比べれば・・・。
少なくとも、美沙から受けた恩はどんな事をしてもしたりない。僕の力で美沙を助けられるのであれば、この力いかようにも使う。それが僕の存在理由なのだから・・・。

PL:
新キャラの川早毅幸君の紹介です。
本当はもっと色々な事を書きたかったんですが、あまり長すぎてもよろしくないかと思い、「そんなこんな」な部分は省いて、この程度で収めてみました。・・・それでも長いですけど(^^;)。
そんな感じで、美沙命な毅幸君ですが、よろしくお願いします〜。